個人事業主のサポート機関として、商工会・商工会議所の名前を聞いたことがある人もいるでしょう。
ですが、商工会・商工会議所の違いや、具体的に何をしてくれるところなの? といった詳細はあまり知られていません。
無料で色々なサポートを受けられる支援機関なのに、知らないなんて勿体ない!
というわけで、元商工会職員・現個人事業主の私がわかりやすく解説します。
両方の立場から見た評判や賢い使い方など、元職員ならではの話もぶっちゃけますよ!
商工会と商工会議所は、相談無料の支援機関
商工会と商工会議所は、個人事業主や中小企業の経営相談や融資のあっせん、経理の記帳指導、人材採用サポートや労働保険事務組合など、会社の事業に関わる様々な相談や事務手続きのサポートを行っています。
相談は基本的に無料ですが、原則として商工会・商工会議所の「会員」になることが条件です。
会費は地域によって異なりますが、個人事業主であれば月1,000円~2,000円のところが多いです。(非会員でも相談可能ですが「できれば会員に加入して欲しい」という声かけは必ずあります)
商工会と商工会議所は、祭りやイベントの実行委員会、観光協会の事務局など、地域に根付いた活動も担っています
商工会と商工会議所の違いは?
商工会と商工会議所の大きな違いは、管轄の地域が異なる点です。
主に町村エリア=商工会の管轄、市区エリア=商工会議所の管轄 という区分になっています。
ただし、平成の大合併のときに、商工会と商工会議所の間で合併を行った地域と合併しなかった地域があります。
そのため平成の大合併で町→市に編入されたエリアでも商工会の管轄のままだったり、町同士が合併して新しく市を作った地域は「市」であっても従来の商工会の管轄、という事態になっていたりもします。
はっきりいって分かりにくいのですが、当時の商工会の役員(地域の自営業者)が話し合って決めた結果、このようになっています…。
その他の主な違いは以下の通りです。
商工会議所 | 商工会 | |
---|---|---|
根拠法 | 商工会議所法 | 商工会法 |
管轄官庁 | 経済産業省 経済産業政策局 | 経済産業省 中小企業庁 |
管轄範囲 | 市区単位 | 町村単位 |
会員 | 個人事業主・中小企業・大企業 | 地域の中小企業や個人事業主 |
業務内容 | 政策提言、経営相談、地域交流など | 経営相談、記帳指導、地域交流など |
自分の地域の管轄の商工会・商工会議所を調べたいとき
町村エリアにお住まいの人
【公式】全国各地の商工会WEBサーチ(全国商工会連合会)
市区エリアにお住まいの人
【公式】商工会議所検索(日本商工会議所)
ただし、平成の大合併で町村→市になった地域は、最寄りの商工会議所に電話して「この住所は管轄ですか?」と確認することをおすすめします。
商工会と商工会議所の支援内容は?
商工会と商工会議所は、基本的な支援内容はほぼ同じです。
- 経営相談
- 創業支援
- 日本政策金融公庫の融資のあっせん
- 補助金・助成金の申請支援
- 経理の記帳指導
- 確定申告書の作成支援(税理士会より派遣)
- 人材採用サポート
- 労働保険の手続き代行(地域による)
商工会は面倒見がよい
管轄地域が町村=小規模な事業主が多い という実情のため、商工会は親身になって相談に乗ってくれる傾向があります。
商工会議所は小規模事業主から大企業までが会員のため、地域によっては「親身になって相談に乗ってくれる」というレベルでのサポートは期待できない場合もあります。
ただし、どちらも「地域によって異なる」ので、まずは実際に足を運んでみてから判断するのがいいですね。
相談はいつでも無料です。確定申告の前など忙しい時期もあるので、予約はしていった方が良いです。
商工会・商工会議所に相談するメリット
なんといっても無料(別途会費は必要)で何度でも事業の相談に乗ってもらえる点が大きなメリットです。
起業する前の人でも、起業準備の相談や起業セミナーに参加することが可能です。
それこそ「開業届の書き方」から教えてもらえるので、困った時には心強い相談機関と言えるでしょう。
日本政策金融公庫のマル経融資は経営指導が条件
商工会・商工会議所で経営指導(原則6ヵ月以上)を受けるという条件をクリアすると、無担保・無保証人で一般の銀行より低い利率で融資を受けられる日本政策金融公庫の「マル経融資」が利用できます。
創業間もない人は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の斡旋も行っています。これは無担保・無保証人・代表者保証不要の創業融資です。
経理・労務の困りごとをサポート
事業の売上額が低いうちは、税理士に依頼するよりも安い手数料で記帳代行・年末調整・確定申告支援を依頼できます。
※税理士会との協定で、所得金額がある程度(400万円くらい)大きくなると本職の税理士と契約するよう斡旋されます。
事業が軌道に乗ってくると、会社の保険や事業主・従業員の保障も気になりますね。
商工会・商工会議所では業務災害保険の団体割引や小規模企業共済の加入、中小企業退職金共済の手続きも依頼できますよ。
地域によって異なりますが、労働保険事務組合を設置している商工会・商工会議所では、会社の雇用保険や労災保険の手続きを、社労士に依頼するよりも安い手数料で依頼できます。
補助金・助成金の申請サポート
経済産業省・中小企業庁では、小規模事業者(個人事業主)や中小企業向けに様々な補助金・助成金を用意しています。
補助金・助成金は申請すると返還不要のお金がもらえますが、その財源は皆さまの税金です。
ゆえに、きちんと計画を立てて適切に使用したか・費用対効果の報告など、とにかく貰うまで~貰った後にも面倒くさい書類がたくさんあります。
2020年3月現在の主な経済産業省の補助金は以下の通りです。
生産性革命推進事業に係る補助金
ものづくり補助金
中小企業・小規模事業者が実施する設備投資にかかる費用の一部を補助
補助額 100万~1,000万円、補助率 中小 1/2 小規模 2/3
持続化補助金
小規模事業者が取り組む販路開拓や生産性向上の取組を支援
補助額 ~50万円、補助率 2/3
IT導入補助金
バックオフィス業務の効率化等の付加価値向上に繋がるITツール導入を支援
補助額 30万~450万円、補助率 1/2
出典:中小企業基盤整備機構 より
商工会・商工会議所のデメリット
商工会・商工会議所には、小規模事業者支援法に規定された「経営指導員」という支援担当者がいます。
この経営指導員のレベルや支援体制は、はっきりいって地域によって大きく差があるのが実情です。
また同じ商工会・商工会議所の中でも、経営指導員の知識量やノウハウに差があります。
これはプロの税理士や弁護士でも同様ですね
特にネットを介して仕事を受注しているフリーランスの場合、働き方やリモートワークの仕組みを理解している経営指導員でないと、話が通じませんし、トンチンカンなアドバイスをされる場合もあります。
個人的には30~40代前半の経営指導員がおすすめです
また、商工会・商工会議所は昔から「自営業者の相互支援団体」として地域で一定の役割を担ってきましたが、地域に根差した自営業者の集まりゆえに、力を持った役員(自営業者)が固定化されがちです。
そのため地域内で「仲良しグループ」「なれ合い」「派閥争い」などが起こったり、商工会・商工会議所に加入していない非会員の自営業者を地域で冷遇したりと、よくない傾向がありました。
現在ではその傾向は大幅に改善されていますが、地域によっては昔のぬるま湯時代を忘れられない大御所役員・職員が一定数残っているのも事実です。
地域に根差して活動する飲食業や小売業、建設や運送業などには加入のメリットはありますが、ぶっちゃけ在宅フリーランスに加入メリットがあるかというと…うーん、五分五分??
在宅デザイナー等で、商工会で地域の事業者と顔つなぎをして仕事受注につなげる人もいます
商工会・商工会議所は会員の義務ってあるの?
経営支援とはあまり関係ないのですが、商工会・商工会議所に加入すると年に数回、総会などの会議や研修会の出席依頼があります。
だいたい委任状を書いてパスすればOKなんですが、「自営業者の相互支援団体」という性質上、町内会やPTAのような役割分担がどうしても発生します。
ネット上のオンラインサロンでも役割分担を求められる場合がありますから、団体に所属する上で避けては通れないのかもしれませんね
また、男性であれば青年部へ・女性であれば女性部への加入依頼もあります。
田舎の商工会では、グイグイ加入要請されてウザい場合もあります…。
- 祭り・イベントの手伝い
- 年1~数回の研修会の参加(税務セミナーや研修旅行)
- 奉仕活動(ゴミ拾いや花植え)など
商工会・商工会議所以外にも支援機関はあります
商工会・商工会議所のメリット・デメリットを解説しました。
ぶっちゃけ、担当の経営指導員との相性も大きいので、「相談したけどちょっと…」という場合もあり得ます。担当替えも可能ですが、言い出すのも面倒ですよね。
実は、個人事業主向けの無料相談機関は、商工会・商工会議所以外にもあります。
地元の商工会・商工会議所を利用するのはちょっと…と思う人は、ネットで補助金・助成金の情報収集や無料専門家派遣の申し込みができる中小企業庁の「ミラサポplus」もオススメです。